自社の持ち株会の話

 

今回は、従業員持ち株会に関してのコメントです。

 

 員持ち株会は、上場企業が中心ではありますが、今後、上場を目指す企業でも取り入れているケースも少なくありません。企業サイドの視点では、従業員に自社株を保有してもらうことで愛社精神が育まれる(ホントかどうかは別として)、安定株主の確保につながる、順調にいけば従業員の資産形成にもつながる等というモチベーションがあります。

 

従業員の視点では、下記の通り、奨励金という形で企業から補助が出るケースが多く、順調に業績が伸びると自社株式上昇で資産形成につながる面があります。

 

私自身、従業員持ち株会に参加していたこともありますし、友人、知人、同僚、先輩後輩などから、悲喜こもごもなケースを耳にしました。

 

まず、残念なケースから、

 特に印象的な出来事は、1990年代後半に起きた日本の信用不安で、企業の破綻が相次いだことです。山一証券、三洋証券、北海道拓殖銀行、日本長期信用銀行、日本債券信用銀行などを始めとした破綻が続き、近代日本でも例を見ない厳しい歴史になりました。それ以外にも多くの事業会社が破綻の憂き目にあいました。

企業が破綻し、上場廃止になると、投資した自社株の価値もなくなります。

 

直接的にも間接的にも、これらの企業出身に方からお話を聞く機会がありました。

それらの企業から他社に転職したある方は、「雇用を失っただけでなく、持ち株会に参加することで、資産を失うことになったので。今後は自社株に投資するつもりはない」とおっしゃっていました。

 

逆にうらやましいケースも少なくありません。

 製薬会社に勤務されている知人の方は、入社以来、株価が順調に右肩上がりになり、保有資産に占める比率がバカにならなくなったと言われていました。

また、未上場の時から、持ち株会を実施していた家電量販店の場合、従業員の方々に、億り人(1億円以上の資産を保有している方)が沢山いらっしゃるという話も聞いたことがあります。一般的に、業績が伴えばという前提はありますが、未上場企業が上場することで、企業価値が高まることは多くあります。もちろん、上場がゴールのような経営スタンスの企業の場合は、報われないことも考えられます。

 

 

 因みに「持ち株会奨励金」という制度がある企業も多く、5%から10%程度の補助があります。毎月10,000円、拠出する場合、500円や1,000円を企業が負担してくれる制度です。

当時は、特に意識しませんでしたが、税務面では、この金額は所得に該当するようですね。

大きな金額ではありませんが、課税対象が増加するということは、認識していた方が良いですね。それはそれとして、株価が動かなくても奨励金部分がブラスになりますから、多少の下落のバッファーになりますね。ありがたい制度です。

自社株が上昇して、売却した際に譲渡益が出た場合は、通常の取引と同様の課税がされます。

 

「従業員持ち株会」に参加するかどうか?という視点を考えてみます。

 

 メリットとしては、奨励金の存在、株価上昇で資産形成ができる点、自社の業績や経営に関心が高まる点などが挙げられます。逆に、デメリットとしては、株価低迷、極端な場合には上場廃止で無価値になることもゼロではない点、売却するには制約がある点(退職時以外の売却は、売却理由を明示して申請する必要があることが多いです)などが考えられます。

 

 以前は、NISA等の非課税制度が整っていなかったので、持ち株会の優位性がありましたが、現在の制度を考慮すると、非課税制度のNISAを優先するという捉え方もあります。

他にもiDeCo等、税制面で優遇されている制度もあります。

 

 ご自身の可処分所得の水準を考慮して、判断するのが妥当ですね。この中では、非課税制度を優先したいところです。その上で、持ち株会に関しては、まだ余裕資金のある方が検討するのが妥当な気がします。

もちろん、全力で投資するのでは無く、少額を持続的に積立てるのが正攻法だと思いますね。

 

また、自社の業界での位置づけや業績動向、経営陣への信頼感なども、判断材料になると思います。成長期待が乏しく、ボーナスや昇給も厳しいような企業の場合は、将来展望が無ければ、持ち株会も避けていた方が良いと思います。その資金はNISAを通じて、他の投資対象に向けた方が妥当ですね。

 

結論としては、資産形成層の皆さんは、投資の原資に限りがあることが多いと思いますので、基本的には、非課税制度(NISA、iDeCo)を優先した方が良いと思います。従業員持ち株会に上記以外の特殊なメリットが無い以外は、非課税制度優先ですね。

資産を十分お持ちの方は、条件次第で検討の余地があるかもしれません。

 

従業員持ち株会は、魅力があるのですが、NISA等が誕生する前の非課税制度が充実していなかった頃のメリットは薄れつつある印象です。

 

次回は、「平均寿命と健康寿命について」の予定です。

 

 

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