日本銀行の利上げの可能性が話題になってきています。
インフレ率(消費者物価指数)が上昇していることや日米金利差で円安が進行していることなどが背景と思われます。実際に長期金利も上昇しています。
政策金利の引き上げとなると、2007年以来、17年ぶりになるようです。
今回は、金利上昇(利上げ)と不動産の関係についてコメントしたいと思います。
日本では、長い間、ゼロ金利政策が採用され、住宅ローンや預金金利が低い水準に据え置かれてきました。金利上昇は不動産にも少なからず、悪影響を及ぼすと考えられます。
思いつくだけでも、不動産市況への影響は、2つの経路が考えられます。
◆住宅ローンなどの負担増で住宅需要減退
◆金利上昇による割引率上昇で不動産価格が下落傾向へ
◆住宅ローン負担増で住宅需要減退
ひとつ目の住宅ローン負担増についてですが、全ての個人の借入れに共通します。
借入れ金利が上昇すると、金利負担増から消費が減退します。また、既に住宅ローンを変動金利で借りている方にとっては、金利上昇が可処分所得減少につながります。また、これから、住宅購入を検討されている方にとっては、駆け込み需要はあるとは思われますが、金利上昇傾向が続くと判断されると、住宅購入のニーズは冷え込むことも考えられます。
また、不動産デベロッパーなどの不動産会社にとっても、借入金の支払利息負担が重くなります。物件供給も先細りになるかもしれません。
ここ数年、都市部での新築マンション販売が好調でした。
マンション価格も上昇し、不動産市況も良好な状態が続きました。
しかしながら、背景にはゼロ金利政策による低コストの住宅ローンの存在がありました。
特に変動金利は超低金利で住宅ローンが組めるということで人気化しましたね。
金利が上昇すると、相対的に高めの金利である固定金利は変動しませんが(既に借入れしたケース)、変動金利は短期プライムレートの変動に依存します。従って、今後、支払い利息が増加することが懸念されます。新規需要の減少も懸念されますね。
また、ここ数年、マンションの販売は好調でしたが、戸建ての販売は低調だったようです
金利上昇で戸建て需要の更なる減少も考えられますね。
根本的には、人口減少の国に物件供給が続けば、持続的な不動産価格上昇は厳しいと思います。
◆金利上昇による割引率上昇で不動産価格が下落傾向へ
以前のブログでもご紹介しましたが、金利上昇は、各資産のキャッシュフローの現在価値が減じることを通じて、資産価値の下落につながります。財務理論に基づいています。
現在価値=CF(家賃などのキャッシュフロー)/(1+r(金利↑))
金利上昇(r↑)に伴って、分母の数値が高くなり、現在価値が減じます。
この数式は、株式などにも共通します。補足すると、分子のCFが金利上昇よりも高い伸びをすれば、現在価値は高まることになります。但し、不動産の場合は、需要と供給のバランスを考慮すると、賃料の上昇は厳しい気がしています。
都市部のオフィスビルの供給過剰も懸念されています。空室率が上昇すると、CF自体も減少してしまいます。金利上昇とダブルパンチになる可能性もありますね。
借入金の支払利息負担増も懸念されます。
米国では、商業用不動産の不振が懸念されています。高金利が続きましたからね。
利上げが行われると、じわじわ、不動産市況に影響が及び、実態経済にも波及してきます。
不動産は、裾野が広い産業なので、不動産不況になると、日本全体の景気に影響が出てくることもあり得ます。
そもそも、利上げというのは、各中央銀行が基本的には、インフレや景気過熱を抑えるために行われます。個人的な印象ですが、現状の日本の景気はGDPの伸びもマイナスですし、景気の過熱感、高揚感は感じられません。外部要因で物価が上昇し、複合要因で円安が進行しています。円安阻止のため、米金利との金利差縮小を意識した利上げ(まだしてませんが)では?と感じてしまいます。仮に利上げしても、中期的に円安が進行した場合、打つ手が無くなることも憂慮されますね。また、デフレに戻るリスクも感じます。
不動産価格は、公示価格や路線価などで把握することができますが、時間差があるため、実勢と乖離していることも指摘されています。ザックリした把握方法ですが、東京証券取引所が公表している東証REIT指数(不動産投信のインデックス)を見ると、不動産市況が上昇傾向なのか、下落傾向なのかの判断ができると思います。
株価指数ヒストリカルグラフ -東証REIT指数- 日足チャート | 日本取引所グループ (jpx.co.jp)
実際に利上げの可能性が高まり、長期金利が上昇している中で、REIT指数も弱含みになってきています。
結論としては、金利が上昇すると複数の経路から不動産に向かい風になります。
住宅ローンを検討されている方は、現在、低金利の変動金利だけでなく、固定金利での借入れも検討の余地があるかもしれません。条件次第ですが、変動と固定の借り換えもあり得ますね。
次回は、「不動産投信(REIT)投資の心得」の予定です。
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