今回は、株式と金利のバランスを見る「株式益利回り」についてコメントします。
ご存じの通り、米国では長期金利が上昇しています。
インフレ再燃懸念やトランプ次期大統領の施策も影響していると思われます。
この2年間、米国株は年間20%を超過するパフォーマンスでしたが、過熱感も指摘されています。特に金利が上昇することで、株式の割高感が意識さらやすい状況です。
金利と株価の関係は、複数の視点から説明されています。
金利が上昇すると、借入れ大きい企業の業績悪化が懸念されます。
支払い利息が増加するため、営業利益が一定ならば、最終利益にネガティブに働きます。
また、財務理論上、株価評価は、将来の利益(正確にはフリーキャッシュフロー)の現在価値とされており、式で表すと以下の通りとなります。
株価=(CF/割引率)
金利が上昇すると分母の割引率も上昇するため、現在価値は小さくなります。
また、成長企業や業績不振企業の割引率は、プレミアム分が上乗せされ、より高くなるケースが多いです。
不動産評価にも同様の手法が用いられています。
言い換えると、「来年の1万円を現在価値(今の価値)に引き戻すと幾らになるか?」というアプローチです。「1年後に元本と金利を加味して幾らになっているか?」を逆にしただけです。
金利が高ければ、来年の10,000円の現在価値は小さくなりますね。
9,000円が利息込みで1年後、10,000円になるのと
8,000円が1年後、10,000円になるのは、割引率(金利水準)に依存します。
金利が高ければ高いほど、現在価値は小さくなることがわかります。
ということで、金利が上昇すると、現在価値が下がり、理論上は、株価にネガティブに働きます。
次に、長期金利と株式益利回りを比較するアプローチを紹介します。
債券と株式とどちらが魅力的かという比較ですね。
株式益利回りは、株価収益率(PER)の逆数になります。
株価収益率(PER))=株価/1株当たりの利益(EPS)
株式益利回り=1株当たりの利益(EPS)/株価
上記の式を見ると、株式益利回りは、株価に対してどれくらい利益を稼いでいるのかという解釈ができます。また、配当性向100%だった場合の配当利回りとも言えますね。
この数値と長期金利を比較して、どちらが魅力的か判断します。
2025年年初の10年債の米国長期金利は約4.8%です。
一方、S&P500指数のPERは、約24倍とされています。
逆数を取ると以下の式になります。
PER=24/1
株式益利回り=1/24 ≒4.16%
ということは、長期金利の4.8%と株式益利回りの4.16%の比較になります。
債券価格は変動しますが、償還(満期)まで保有すれば、国債の場合、リスクはありません。
(とりあえず、無いということになっています)
従って、リスクの無い国債が4.8%で株式の益利回りが4.16%だと国債の方が魅力的ということになります。
仮にPERが20倍まで低下すれば(株価が下落すれば)、益利回りは5%となり、株式益利回りが上回ります。
長期金利が低い時は、あまり、注目されない視点ですが、最近のように長期金利が上昇すると、金利の高止まりで株価が上昇しにくい現象が見られます。
尚、FRBや日本銀行が金融政策で調整するのは、あくまでも、短期金利で長期金利は市場に委ねられるのが原則です。(日銀の国債買い入れなど、極めて異例の対応はありましたが)
従って、FRBが利下げを行っても、長期金利が連動するとは限りません。
最近では利下げ見通しがあっても、逆に金利が上昇しています。
金利が上昇するのは、債券が売られることと同義です。
現在の金利上昇は、インフレ再燃リスクや新政権の政策リスクが反映されつつあるように感じています。
長期金利が5%程度の水準で、且つ金利上昇局面では、持続的な株式の高パフォーマンスは期待しにくいケースが多いです。特にグロース株と呼ばれる成長株は、求められる割引率が高めであることやPER自体が高いこと、言い換えると益利回りが低いことから、金利上昇局面では、活躍の場面が限られる可能性も視野にいれておきたいところです。もちろん、金利上昇の悪影響以上に利益を伸ばすことができれば、この限りではありません。
最近の米国市場では、雇用統計や消費者物価指数、小売売上高などの経済指標が強いと金利が上昇し、株価が下落するケースが多いですね。景気が良いことよりも、金利上昇が懸念されている印象です。1月15日に発表された米消費者物価指数は、概ね、予想通りで金利が低下、株価が大幅上昇しました。
当面の株価推移は、金利動向が重視され、景気動向よりも注目されそうです。
株価とともに、金利動向にも要注目です。
次回は、「自社の持ち株会の話」の予定です。
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