NISA、積立NISAの投資戦略

NISA、積立NISAの投資戦略

 

前回の「ビジネスマンができる税金対策」の補足です。

上場している有価証券の譲渡益課税は、一般的な「源泉徴収ありの特定口座」を利用している場合、申告不要で税率は、復興特別所得税を加え、2021年6月現在、20.315%となっています。それと比較して税負担が20%を超過する所得額は以下の通りです。

 

695万円~900万円未満        23% 控除額:636,000円

900万円~1,800万円未満           33% 控除額:1,536,000円

1,800万円~4,000万円未満         40% 控除額:2,796,000円

4,000万円以上                  45% 控除額:4,796,000円

 

上記の通り、譲渡益課税は、定率の税金なので、所得が多い方にとっては、収入の分散効果が期待できます。20.315%の税率以上の所得税率を負担されている方にとっては、税制面という視点から有価証券投資の検討余地があると思います。尚、有価証券譲渡益の中で損益通算はできますが(申告が必要になります)、その他の所得とは合算できません。また、損失を翌年から3年間、繰越すこともできます。(申告が必要となります)

このように税率の違いを確認することで投資手法の選択が可能となります。例えば、不動産所得は、所得税として累進課税となりますが、REITの場合は、有価証券譲渡益課税ですから、前述の通り、源泉分離課税で20.315%の税負担となります。期待リターンが異なりますが、税率の違いを考慮すると一考に値するかもしれませんね。現物のゴールド(金)と有価証券(投信、ETF等)で投資をするゴールドも同様です。これは、別の機会にお伝えします。

 

それでは、本題に入ります。ご存知の通り、NISA、積立NISAは、非課税枠で投資ができる納税者にとって有利な制度です。

前回のコラムでもご紹介しましたが、一般的な給与所得者(ビジネスマン)にとって、効果的な税金対策は、「NISA(積立NISA含む)」、「確定拠出年金(DC、iDeCo含む)」、「ふるさと納税制度」位と私は思っています。医療費控除、住宅取得控除や雑損控除等もありますが、全ての方が該当する訳ではありません。

 

2021年6月現在のNISA、積立NISAを簡単な概要は、以下の通りです。

詳細については、各金融機関でご確認ください。

 

【NISA】

・毎年最大120万円の投資枠 最長5年間投資から得た利益が非課税となります

→必ずしも、5年間保有しなければならないわけではありません

→必ずしも、120万満額、投資をしなければならないわけではありません

・投資信託、内外株式、REIT等、多様な商品に投資ができます(複数の資産への投資も可)

・日本に住む20歳以上の方が使えます

・証券会社、銀行でNISA口座を作る必要があります

・一人、一金融機関、一口座です

・年間120万円の枠は、その年に使い切らなければなりません(繰越はできません)

・NISA口座で保有している有価証券を売却しても、その年の枠が増えることはありません

・NISA口座内で損益通算ができません

・2023年からは、新制度に移行する予定です

・同じ年にNISAと積立NISAの併用はできません

・株式に投資した場合、配当は証券口座に入ります。(株式数比例配分方式)

・米国株の配当は外国税額控除を利用できないため、10%が源泉徴収されます。

 

【積立NISA】

・毎年40万円の投資枠 最長20年間、投資から得た利益が非課税となります

→必ずしも、20年間、保有しなければならないわけではありません

・国が定めた投資信託が投資対象です

・日本に住む20歳以上の方が使えます

・証券会社、銀行で積立NISA口座を作る必要があります

・一人、一金融機関、一口座です

 

≪NISAに関する投資戦略≫

結論:「全世界株式インデックス」や「S&P500(米国株)インデックス」がメイン、リスク許容度によっては、内外の個別株やテーマ型投信も検討の余地あり

 

まず、年間120万円という投資額は、その方が保有する総金融資産額とのバランス、リスク許容度を考慮する必要があります。金融資産額が300万円の方と3億円の方とでは、同じ120万円に投資する場合でも、リスクの捉え方が異なります。仮にNISA枠が3,000万円あれば、期待リターン3%でも十分でしょうが、120万円に対して期待リターンが3%では年間3.6万円、5年間で18万円です。決して、低い投資収益ではありませんが、大きな金融資産をお持ちの方からすれば総金融資産額に対するリターンとして、寂しいものがあります。知人の証券会社支店長は、「一定の資産をお持ちの方には、NISA枠は、個別株で案内しています」と言っていました。但し、内外の個別株に投資する際には、できれば、業種や産業の特性を分散し、複数を選択する方が望ましいと思います。何らかの理由で、特定の個別株が売られることがあるという前提でポートフォリオを組みたいものです。

リスクを取れる方(資産をお持ちの方等)は、内外の個別株やテーマ型の投信、期待リターンが高い資産に連動するインデックスファンド等も視野に入ると思います。「120万円の枠ならば、半分になっても良いから、3倍や5倍になるような商品は無いのか?」という投資家の方のお話を何度も伺ったことがあります。

120万円の枠は、各投資家の「総金融資産額」、「リスク許容度」、「ゴールベースに基づく必要リターン」等の変数によって、投資対象を検討すべきと思われます。個人的には、NISA枠を使って、期待リターンがマイルドな一般的なバランスファンド等に投資するのは、ややもったいないように感じています。リスクを取りにくい方は、「NISAの枠を全て、使い切らない」という投資判断、「積立NISAでより長期間の投資を行う」こと等も選択肢になると考えます。また、ひと手間かかりますが、毎月月末に同じ投信を10万円ずつ(もちろん、5万円ずつも可)NISA枠で投資するという方法もあります。(積立と同様の効果ですね)

また、120万円の枠を一度に使い切る必要はありません。というか、むしろ、何回かに分けて投資をされた方が、時間分散の観点からも取得コストが安定します。毎年、10%から20%程度の株価の調整はつきものですから、そのような局面で投資ができるとベターですね。尚、米国株でNISA制度を活用する場合、証券会社によっては、対応できない場合があるので事前にご確認ください。

NISA口座は、一人、一金融機関しか開設できませんが、手続きをすれば、別の金融機関に変更することも可能なので、ニーズに応じて、金融機関変更を含めた情報収集も有効です。また、配当金は株式数比例配分方式により、証券口座に入りますので、郵便局等で受け取りたい方はNISA口座での株式購入は不適です。また、米国株の場合は、外国税額控除ができないため、10%が源泉徴収されます。

 

≪積立NISAに関する投資戦略≫

結論:長期の積立を前提にすれば、「全世界株式インデックス」や「S&P500(米国株)インデックス」がベストと考えます

 

こちらの制度は、資産形成層(20代から30代の方)に是非、検討して頂きたい制度です。

特に投資期間が20年と長期にわたるため、何度も景気循環が起こることが想定されます。仮に含み損が発生しても、次の景気の山が期待できること、また、積立効果で取得コストが安定すること、グローバルの視点でみれば経済成長は今後も期待できること等の点から「グローバル株式インデックスファンド」や「米国株式インデックスファンド」等が好ましいと思います。確定拠出年金(DC、iDeCo)も同様の考え方で良いと思います。

積立NISAの投資対象は国が定めた投信だけで、株式や他の投信は該当しないのが残念ではありますが、インデックスファンドでも長期的には十分な収益を期待できると思います。但し、少子高齢化が進展する地域等に投資する投信は、長期的な視点では期待リターンが低いと思っています。また、低金利下かつ金利上昇の可能性がある環境下での債券投資(2021年6月ですね)も魅力の面では見劣りするというのが私見です。

年間40万円の枠と20年間の期間を考慮すると、投資の適齢期は30代から40代半ばまでの方で、それ以上の年代の方は通常のNISAの方が投資可能期間から好ましいかもしれません。NISA枠を超過した場合、税制優遇はありませんが、追加で通常の積立を行うという選択肢もあります。積立NISAに関しては、20年後の自分自身、ご家族をイメージして投資を検討してみてください。積立NISAから一般NISAに年ごとに選択の変更も可能ですので、一定の年齢になった際や保有金融資産の規模が大きくなった際、等に一般のNISAに切り替える策もありですね。

また、どちらの制度も20歳以上が対象なので、祖父母や父母からの暦年贈与との組合せも検討したいところです。若い段階で苦い経験を含め、投資経験を積むと将来的に経験値としても大きな財産になると思います。

 

個別具体的な事例に関しては、税理士の方にご相談ください。

尚、投資判断につきましては、ご自身の判断、責任でお願いします。

次回は、「人生100年時代と健康人生100年時代と健康寿命のギャップについて思うこと」のコメントをしたいと思います。

寿命のギャップについて思うこと」のコメントをしたいと思います。

 

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